ランニングシューズ

痛みや怪我を減らすランニングシューズの選び方

 

ランニングシューズと怪我について

ランニングによる怪我や痛みとランニングシューズには密接な関係があり、シューズによって痛みが出たり、痛みが和らいだりすることは珍しくありません。

快適なランニングをするためには身体に合ったランニングシューズを手に入れることが大事です。

クラウドモンスター

しかし、スポーツ用品店などには膨大な数のシューズが売られていて、ランニングシューズの販売員は人によってオススメするシューズに違いがあるなど、どのようなシューズを選ぶのがいいのか判断に迷うことも多いことかと思います。

というのもランニングシューズに対する反応は個人差が大きく、特定の個人には良かったシューズであっても他の人には逆効果になってしまうということがよく起こります。

 

用途別のランニングシューズ

全ての怪我を防げるような万能なランニングシューズというものはなく、どのシューズにも一長一短があります。

このため痛みや怪我を減らすという観点でランニングシューズを選ぶ場合には、怪我の種類によって適切なシューズが変わってきます。

 

足底筋膜炎

足底筋膜炎

足底筋膜炎を防ぐためにはクッション性が高く、適度にミッドソールが厚いシューズを選ぶことが役立ちます。

また、踵が1〜3cm高い形状のシューズなども重心をうまく分散させることができるため、負荷を減らしやすいと言われています。

Gel Nimbus 25
足底筋膜炎を防ぐためのランニングシューズとは?

  足底筋膜炎とは 足底筋膜炎は足の裏にある筋膜が炎症を起こす状態で、足底筋膜はかかとの骨から足の指につながっており、ランニング時の衝撃を吸収する役割があります。 足底筋膜炎はかかとや土踏ま ...

続きを見る

 

疲労骨折

疲労骨折

足部の疲労骨折を抱えている場合には、疲労骨折をしている部分に体重がかからないようにすることが大事です。

疲労骨折の多くは中足骨で起こりやすく、この場合には踵の高さを低めにすることで疲労骨折部位に体重がかかりにくくすることができます。

また、疲労骨折の場合にはクッション性も大事であり、クッション性が高いことで疲労骨折している部分に急激な力がかかることを和らげることができます。

ランナーの疲労骨折の原因と対策について

 

シンスプリント

シンスプリント

足部が不安定な場合に下腿の筋肉に負荷がかかりやすくシンスプリントを引き起こしやすいため、フラフラしにくい安定したランニングシューズを選ぶこともシンスプリントの予防につながります。

また、シンスプリントは足部のプロネーションが原因になりやすいため、プロネーション対策が施されたランニングシューズを選ぶことも役立ちます。

シンスプリントを走りながら治す方法

 

アキレス腱炎

アキレス腱炎

アキレス腱炎を防ぐためにはランニングシューズの踵部分を高くすることでランニング時のアキレス腱の負担を減らすことができます。

ランニングシューズを買い換えなくとも、踵部分にヒールパッドを入れることなども役立ちます。

アキレス腱炎を走りながら治す方法

 

膝痛

膝の痛み

膝痛を抱えている場合にはランニングシューズのクッション性が大事であり、クッション性が高いことで膝の負担を減らすことができます。

また、ランニングシューズを履いた時の姿勢も重要であり、膝が内側に入るニーインなどの悪い姿勢を防げるようなシューズを選ぶことも膝の負担を減らすポイントになります。

ランナー膝が治らない場合に考えられる原因

 

扁平足

扁平足

扁平足の場合には主に専門家が処方するインソールで対処することが効果がある対策とされており、扁平足に適しているランニングシューズに明確なものはないことが報告されています

実際にアーチの高さでランニングシューズを選んでも怪我の発生率にほとんど違いが見られないことが報告されています

扁平足
扁平足のランニングへの影響

ランニングの怪我の原因として扁平足や足のアーチが崩れてしまっているというのを耳にしたことがあるかと思います。 足のアーチを改善することで良い結果が出るときもあれば、思うように行かない事も多々あり、正解 ...

続きを見る

 

ランニングシューズの評価方法

どのようなランニングシューズを選んだらいいのか?というのは置かれた状況や怪我によって違ってきます。

ランニングシューズに求められる機能には一定の方向性がありますが、実際に選んだランニングシューズが本当に合っているかどうかは別の問題となります。

このためランニングシューズが身体にフィットしているかどうか?というものを判定する必要があります。

 

足底圧力の分析

スポーツ用品店では足型分析などと呼ばれる測定機器があり、シューズを履いた時の圧力を分析することができます。

この測定機器の結果によってオススメのランニングシューズを提案するというものですが、足底圧力のパターンはランニングの怪我との関連性が弱いことが複数の研究で報告されています

(Keira et al 2016)

足底筋膜炎や疲労骨折などの特定の部分に体重がかかって引き起こすような怪我の場合には足底圧力を分析することが役立つのですが、それ以外の怪我では関係性が弱いのが現状です。

あくまで体重がうまく分散されているかどうかの分析に過ぎず、姿勢やランニングフォームの良し悪しを正確に分析できるものではないかと思います。

興味がある人は参考程度に使ってみるくらいが丁度いいかもしれません。

 

足部のプロネーション・スピネーション

プロネーション

ランニングシューズの分類に足部のプロネーションやスピネーションというものがあり、足部の姿勢やアライメントに応じたランニングシューズを選ぶというものです。

残念ながら足部のプロネーションやスピネーションによるシューズの分類も怪我に対してそこまで効果があるわけではないので、こちらも参考程度に考えることが無難であるかと思います。

ランニングプロネーション
ランニング時の足部のプロネーションと怪我のリスク

  足部のプロネーションとは? ランニングの着地時にかかとが内側に倒れ込む動きをプロネーションと呼びます。 これは衝撃を分散するための自然な動きであり、ある程度のプロネーションが起こることは ...

続きを見る

 

ランニングフォーム

ランニング

ランニングシューズを履いた時の動きやランニングフォームでシューズの良し悪しを判断するという方法です。

残念ながら、そもそもランニングフォーム自体が怪我との関連性が弱いため、怪我や痛みを減らすためのシューズの評価方法としては不安が残ります。

ランニングフォーム
怪我を減らすランニングフォームとは?

ランニングでの怪我を減らすためにランニングフォームの問題点を分析し、効率的なランニングフォームへと改良しようと試みたことがあるランナーは少なくないかもしれません。 しかし、ランニングフォームを変えるだ ...

続きを見る

 

快適性

ランニングシューズ選ぶ時には履いた時の感覚がとても重要です。

実際に快適に感じるシューズを選ぶことで、痛みや怪我を減らしやすいことが報告されています

走っている時に快適に感じるランニングシューズを選ぶと、自然と身体に負担のかかりにくい動きになりやすいことが理由ではないかと言われています

ランニング

しかし、お店でシューズを履いてちょっと歩いただけの感覚と、実際に走ってみた時の感覚は違っていることがあることに注意が必要です。

できるのならばランニングシューズを履いて一定時間走っておきたいところですが、ちょっと現実的ではないかもしれません。

 

まとめ

全ての怪我を防げるような万能なランニングシューズはなく、どのシューズにも一長一短があり、怪我の種類によって適切なランニングシューズが変わってきます。

そして、特定の怪我を防ぐためのランニングシューズに求められる機能には一定の方向性がありますが、それが本当に身体に合っているかどうかは実際に履いて試してみることが大切になります。

 

<参考文献>

  1. Kodithuwakku Arachchige SNK, Chander H, Knight A. Flatfeet: Biomechanical implications, assessment and management. Foot (Edinb). 2019 Mar;38:81-85. doi: 10.1016/j.foot.2019.02.004. Epub 2019 Feb 11. PMID: 30844660.
  2. Knapik JJ, Trone DW, Tchandja J, Jones BH. Injury-reduction effectiveness of prescribing running shoes on the basis of foot arch height: summary of military investigations. J Orthop Sports Phys Ther. 2014 Oct;44(10):805-12. doi: 10.2519/jospt.2014.5342. Epub 2014 Aug 25. PMID: 25155917.
  3. Mann R, Malisoux L, Urhausen A, Meijer K, Theisen D. Plantar pressure measurements and running-related injury: A systematic review of methods and possible associations. Gait Posture. 2016 Jun;47:1-9. doi: 10.1016/j.gaitpost.2016.03.016. Epub 2016 Mar 30. PMID: 27264395.
  4. Mündermann A, Stefanyshyn DJ, Nigg BM. Relationship between footwear comfort of shoe inserts and anthropometric and sensory factors. Med Sci Sports Exerc. 2001 Nov;33(11):1939-45. doi: 10.1097/00005768-200111000-00021. PMID: 11689747.
  5. Nigg BM, Baltich J, Hoerzer S, Enders H. Running shoes and running injuries: mythbusting and a proposal for two new paradigms: 'preferred movement path' and 'comfort filter'. Br J Sports Med. 2015 Oct;49(20):1290-4. doi: 10.1136/bjsports-2015-095054. Epub 2015 Jul 28. PMID: 26221015.
  6. Karia, Sharvindsing et al. “Plantar pressure distribution and gait stability: Normal VS high heel.” 2016 2nd IEEE International Symposium on Robotics and Manufacturing Automation (ROMA) (2016): 1-5.

-ランニングシューズ

© 2024 ランニングの医学