ボディメンテナンス

ランナーの腸内環境とリカバリーの向上

 

ランナーは日々の練習によって疲労が蓄積しやすく、オーバートレーニングになるとパフォーマンスが落ちてしまうので日々のリカバリーが重要になります。

ランナーの腸内環境は疲労回復やリカバリーに関係しており、腸内環境を整えることが競技力向上につながる可能性があります。

 

腸内環境とランナーのリカバリー

プロバイオティクスの効果

プロバイオティクス

乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスには様々な種類があり、乳酸菌飲料やヨーグルトなどが有名です。

腸内環境を整えるプロバイオティクスが持久系アスリートの免疫を高めることが報告されています

プロバイオティクスとは、人体に自然に存在する微生物と同じ、あるいは類似している生きた微生物(例:細菌)であり、健康に有益であるかもしれないと考えられています。人体を細菌やその他の微生物の「宿主」として捉えるとプロバイオティクスへの理解がより深まるかもしれません。人体の中でも特に下部消化管(腸)は、複雑で多種多様な細菌群が存在しています。細菌は有害な「病原菌」と考えがちですが、実際には細菌の多くは体の機能を正常に保つのに役立っています。

厚生労働省eJIM

 

研究では数週間から数週間から10週間など、一定期間継続的にプロバイオティクスを摂取することで免疫力の向上や疲労軽減などの効果があることが報告されており、

1回摂取するだけでなく継続的にプロバイオティクスを摂取することが腸内環境を整えるポイントになります。

 

乳酸菌飲料の品質について

プロバイオティクスが含まれている商品はたくさんありますが、その効果や機能が証明されたのは特定の菌株に限られています2・3

サプリメントや健康食品では効果のないものが売られていることが多々あるため、根拠がある商品を選ぶことは大事になります。

特定保健用食品や機能性表示食品には研究によって効果が確認された菌株が使われているので、プロバイオティクスを選ぶ際の目安になります。

 

機能性表示食品は事業者が科学的根拠を消費者庁に届け出ることで、特定の保健の目的が期待できる旨を表示することができる食品のことです。

あくまで自社の研究による自己申告であり、第三者のチェックが入っているわけではありません。

例えばヤクルト1000は1本150円、ヤクルト社が史上最高の〜と謳っていますが第三者がそれを証明しているわけではありません。

 

特定保健用食品(トクホ)は国による審査が必要であり、消費者庁が許可をしているものです。

第三者が検証しているという点ではトクホの方がより客観的で信頼性が高いのですが、必ずしも効果がずば抜けて高いというわけではありません。

例えばトクホの認定がある乳酸菌飲料よりも、機能性表示食品であるヤクルト1000の方が効果が高いという可能性はあるわけです。

 

米国食品医薬品局(FDA)はプロバイオティクスに対して、いかなる健康強調表示も認めていないことを認識しておくことが重要です。

厚生労働省eJIM

 

乳酸菌飲料を試してみた結果

ピルクル

私自身が消費者庁に許可された特保の乳酸菌飲料を継続的に飲んでみたところ、ランニングの練習による疲労に対するリカバリーが向上したと実感しています。

私は激しいインターバル走とウェイトトレーニングを同じ日に実施することがあるのですが、このトレーニングをした翌日はかなりの疲労感に襲われてしまうことに悩んでいました。

が、乳酸菌飲料を飲み始めてから、激しいトレーニングをした翌日の疲れが軽くなっているで疲労回復効果があると思います。

 

きつめの練習が続けば疲れが溜まっていくことに変わりはないのですが、ポイント練習の翌日の疲労が少し楽になるだけでもありがたいです。

乳酸菌飲料でリカバリーが向上するのは気のせいという可能性も否めませんし、他の人にも同じような効果がある保証はありません。

とはいえ10本入りで200円弱というお手頃な価格であり、1日1本飲むだけなので、一度試してみる価値はあるのではないでしょうか。

ランナー向けのサプリメントや健康食品は高額なものが多いので、かなりコスパが良い商品ではないかと思います。

 

腸内環境とランニングのパフォーマンス

腸内環境とマラソンのタイム

マラソン

腸内環境はランニング時のエネルギーの供給や乳酸処理などに関わっており、マラソンランナーの腸内環境がパフォーマンスと関連していると言われることがあります。

例えば青山学院大学のランナーの腸内環境を調べた研究では、特定の菌類がランニングのタイムとの関連性が強いことが明らかになっています。

腸内細菌叢が多様性に富み、特に「バクテロイデス・ユニフォルミス(以下、B・ユニフォル菌)」が多く存在していた。B・ユニフォル菌の数が多いほど、3000メートル走のタイムが向上。

青学陸上部所属ランナーの腸内細菌を調査、「ある菌種」が走行タイムを改善

 

他にも腸内環境を調べた研究ではマラソン後にベイロネラ属の細菌が増えることが報告されており、これをマウスに移植すると走行距離が約13%伸びるといった事例もあります

 

マラソンのための腸内細菌を増やすには?

マラソンランナーのパフォーマンスを高める腸内の細菌が存在する可能性があり、腸内環境を整えることでタイムの改善につながるかもしれません。

しかし、マラソンのタイムを伸ばすための腸内環境を整えるような食品はいまいちよく分かっておらず、現時点では科学的根拠が弱いのが現状です。

例えば乳酸菌飲料などのプロバイオティクスの摂取によるマラソンのパフォーマンスの向上はほとんど見られないことが報告されています

ランニング

マラソンのパフォーマンスに関連する腸内細菌を増やすために大事なのは、特定の食品を摂取することではなく、マラソンの練習をすることです。

というのもマラソンを走ることでランニングのパフォーマンスに関係する腸内細菌が増えることが報告されているわけです

乳酸菌飲料などで腸内環境を整えるのは、あくまで疲労回復やリカバリー目的であり、質の高い練習がやりやすい状態を作るためのものになります。

 

まとめ

乳酸菌飲料などプロバイオティクスを摂取することでランナーの腸内環境が整い、免疫力の向上や疲労回復などに役立つ可能性があります。

ランナー向けのサプリメントや健康食品は費用がかかることが多いですが、乳酸菌飲料は安価で購入できる商品も多く、コスパが良いと言えます。

 

<参考文献>

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  3. Porepp ODSC, Xavier MG, da Silveira LM, Lindenau I, Schellin AS, Piccoli RC, Messenburger GP, da Silva PP, Oliveira PS, Delpino FM, Pieniz S. Effect of Probiotic Supplementation on Gut Microbiota and Sport Performance in Athletes and Physically Active Individuals: A Systematic Review. J Diet Suppl. 2024;21(5):660-676. doi: 10.1080/19390211.2023.2293842. Epub 2023 Dec 26. PMID: 38148685.
  4. Scheiman J, Luber JM, Chavkin TA, MacDonald T, Tung A, Pham LD, Wibowo MC, Wurth RC, Punthambaker S, Tierney BT, Yang Z, Hattab MW, Avila-Pacheco J, Clish CB, Lessard S, Church GM, Kostic AD. Meta-omics analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism. Nat Med. 2019 Jul;25(7):1104-1109. doi: 10.1038/s41591-019-0485-4. Epub 2019 Jun 24. PMID: 31235964; PMCID: PMC7368972.

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