最近ではフォームローラーを使って身体をほぐす方法が知られてきており、フォームローラーでランニングのケアをする人も増えてきている印象です。
身体のメンテナンスをすることは大事なことですが、フォームローラーはマラソンの怪我に対して本当に効果を発揮するのでしょうか？
フォームローラーの効果
柔軟性の向上
フォームローラーを使うことの効果は何より、柔軟性が向上する効果があることです１・２。フォームローラーに乗ってゴロゴロするだけで筋肉のコリに効かせることができ、柔軟性アップの効果があります。そして、ストレッチとフォームローラーを組み合わせることで、より高い柔軟性を獲得できるという研究結果もあります３。
筋肉痛の防止
フォームローラーには筋肉痛を減らす効果が報告されており２、アスリートの日々の練習後のケアにフォームローラーを使うことで筋肉痛を軽減することができます。
一般的にストレッチで筋肉をほぐすよりも、フォームローラーなどで直接筋肉をほぐしたほうが筋肉痛を軽減する効果が高いとされています４。
激しい練習の後にフォームローラーを使うことで翌日のランニングの調子が良くなる可能性があります。
ランニングへの影響
フォームローラーを使って全身をほぐすと身体が軽くなり、速く走れそうな感覚があると思います。
残念ながらフォームローラーを使用した直後のランニングフォームに大きな変化はないとする研究結果があり５、フォームローラーによるパフォーマンスの改善は微々たるもののようです６。
ごく稀にフォームローラーを使うことでランニングエコノミーが改善したという研究結果も存在するのですが、そういった研究はサンプル数が少なかったり、同様の研究結果を報告している論文の数が少ないなど、フォームローラーによってマラソンが速くなることは再現性が低いと考えられます。
あくまで再現性が低いということであり、フォームローラーを使うことで速く走ることができたという事例は少なからずあると思います。
痛みに対する効果
痛みを抱えている人がフォームローラーを使うことがあるかもしれませんが、一般的に痛みを減らす効果に関して科学的根拠は弱いようです１。
フォームローラーで身体をほぐすほど痛みが良くなるということはあまり期待しない方がいいかと思います。またフォームローラーを使うことによるスポーツの怪我予防についても科学的根拠はなく、フォームローラーを使って身体をケアすることが怪我の予防になるかというと微妙なところです。
ランナー膝に対する効果
いわゆるランナー膝（腸脛靭帯炎）に対してフォームローラーを使うことで短期的に痛みが減るといった効果が見られることがあります。
これはフォームローラーを使うことで腸脛靭帯の周辺が緩み、歩行時やランニング時に痛みを引き起こすような負荷が軽減されるためであると考えられます。
一方でランナー膝に対するフォームローラーの長期的な効果は不明であるとされています６。というのもフォームローラーで膝のダメージが回復しているわけではないからです。
身体のバランスを変えることで痛みの感じ方が変わりますが、ダメージを受けた膝が修復されているわけではないのです。
フォームローラーでランナー膝の痛みが一時的に減ることがあるため、長期的な効果もあると勘違いしやすいことに注意が必要です。
むしろ、フォームローラーを使うことでランナー膝が治ったと勘違いして、十分な休養を取らないままランニングの練習を再開してしまうことの心配があります。
ダメージが回復しないまま、さらにダメージを上乗せしてしまう行為であり、ランナー膝が悪化してしまう恐れがあります。
以前の私と同じような失敗をして欲しくありません。
フォームローラーのメリット
広範囲を手軽にほぐせる
ストレッチやマッサージなど身体のケアの方法には様々なものがありますが、その中でもフォームローラーが優れているのは広範囲を手軽にほぐすことができる点です。
マッサージやストレッチでほぐすよりもフォームローラーでほぐしたほうが、圧倒的に短い時間で広範囲のケアができます。
身体のケアの習慣化
毎日ストレッチの習慣をやろうと思うと、意外と時間がかかってしまい長続きしないということがあります。
一方でフォームローラーならば数分間ゴロゴロするだけでも広範囲をほぐすことができるので、身体のケアがしやすく、習慣として取り入れやすいという強みがあります。
フォームローラーのデメリット
効果の限界
フォームローラーの効果には限界があり、何十分とフォームローラーを使っても効果が限られています。
そもそもフォームローラー自体が筋肉の深いところに届きにくいという性質があり、なんでもかんでもほぐせるわけではありません。
また、フォームローラーを毎日使ったからといって劇的な効果が生まれるとは限りません。
使えば使うほど効果が高まるというものではなく、適度に使うくらいのほうが身体のメンテナンスとして適しているかもしれません。
まとめ
フォームローラーはとても便利なツールでうまく取り入れることでコンディションを整えやすくなりますが、フォームローラーの長所や短所を理解することでより効果的に使えるかと思います。
＜参考文献＞
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