ランニングフォーム

怪我を減らすランニングフォームとは?

2023年11月9日

ランニングでの怪我を減らすためにランニングフォームの問題点を分析し、効率的なランニングフォームへと改良しようと試みたことがあるランナーは少なくないかもしれません。

しかし、ランニングフォームを変えるだけで怪我を減らすというのは簡単なことではありません。

 

ランニングフォームと怪我の発生率

そもそも怪我をしやすいランニングフォームというのは少なく、よほど変な走り方をしていない限り大きな問題になることはありません。

ランニングフォーム

ランナー300名のランニングフォームを分析しその後2年間の怪我の発生率を調べた研究では、怪我をしやすいランニングフォームというのは膝の動きが硬い走り方だけだったことが報告されています

さまざまなランニングフォームがある中で、怪我の発生率を引き上げるようなものは少ないことを示しているのではないでしょうか。

 

ランニングフォームによる負荷の変化

ニーイン

怪我をしやすいランニングフォームと言われることが多いのが、膝が内側に入ってしまうようなランニングフォームです。

ニーインがランナーの怪我に関係しているという研究結果があるものの、それに疑問を呈するような論文も多く存在しています

ニーイン

しかし、ランナー膝(腸脛靭帯炎)など特定のランニングの怪我に対してニーインは強い関連性があります。

 

プロネーション

ランナーの怪我につながるランニングフォームとして、足部のプロネーションも有名です。

プロネーション

実際に怪我をしたランナーは足部のプロネーションを抱えていることが多いのですが、一方でプロネーションを無くせば怪我が減るのかというと微妙なところなのです

 

負荷が大きく減らない理由

他にも様々なランニングフォームがありますが、微々たる変化しかないことが多い印象です。

その理由としてランニングフォーム改造をしても数センチ程度しか変化させられないことが多く、物理的な負荷を劇的に減らすことが難しいのです。

ランニングフォームの改良に全く効果がないわけではなく、月間走行距離300kmが限界だったところが310km〜320kmくらいになるくらいの効果を生み出せる可能性はあります。

しかし、これは効果をあまり感じられないような、わずかな変化でしかないことが珍しくありません。

 

科学的根拠があるフォーム介入

基本的にランニングフォーム改善に痛みや怪我を減らす効果は限られていることが多いのですが、怪我を減らせるようなランニングフォームも存在しています。

研究での裏付けがある、怪我を減らせる可能性があるランニングフォームは柔らかく着地をすることです

簡単に言うならば、芝生の上を走っているように柔らかく脚を動かしましょうということです。

(Chan et al 2018)

しかし、スピード練習など速いタイムを求めるようなランニングではこのような動きをするのは難しいという欠点があります。

速く走るためには基本的に膝や足首を固める必要があり、柔らかい動きではエネルギーが逃げてしまいます。

 

そして、ランニング時の柔らかい着地というのはランニングフォーム改良の練習をしなくても、芝生やゴムチップなどの柔らかい路面を走ることや、クッションの効いたシューズを履くことなどである程度代用することができます。

怪我を減らすためにわざわざランニングフォームを変える必要があるのかというと、微妙なところだと思います。

 

賛否両論

ここまで怪我を減らすためのランニングフォームに関する研究結果を紹介してきましたが、実際の現場では論文とは違う面もあります。

既に怪我をしているランナー、あるいは同じ場所を繰り返し怪我をしてしまうランナーの場合には、ランニングフォームの改良によって負傷部位の負荷を下げるということが有効です。

怪我をしていない他の部位に負荷を分散させるというのは怪我を防ぐための効果的な戦略です。

 

ランニングフォームを変えることで痛みがなくなることがありますが、

一方で蓄積されたダメージがなくなるわけではないので、怪我が治ったと勘違いして練習を続けると怪我が悪化してしまう可能性があるので注意が必要です。

 

そして、競技レベルが高いランナーほどランニングフォームの改良の恩恵を受けやすくなります。

というのも競技レベルが高くなるにつれて1秒の差が重くなっていき、ほんのわずかな効果しかないランニングフォームの改良という方法が勝負を左右する可能性が高くなるのです。

科学的根拠や論文に書いてあることではなく、感覚を信じてランニングフォームを変えてみる価値はあると言えるでしょう。

 

まとめ

ランニングフォームの改良がプラスに働くことがありますが、簡単に怪我が治るというほどの絶大な効果があるとは限りません。

 

<参考文献>

  1. Messier SP, Martin DF, Mihalko SL, Ip E, DeVita P, Cannon DW, Love M, Beringer D, Saldana S, Fellin RE, Seay JF. A 2-Year Prospective Cohort Study of Overuse Running Injuries: The Runners and Injury Longitudinal Study (TRAILS). Am J Sports Med. 2018 Jul;46(9):2211-2221. doi: 10.1177/0363546518773755. Epub 2018 May 23. Erratum in: Am J Sports Med. 2021 Feb;49(2):NP13. PMID: 29791183.
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