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ランニング時の足部のプロネーションと怪我のリスク

2024年7月21日

 

足部のプロネーションとは?

ランニングの着地時にかかとが内側に倒れ込む動きをプロネーションと呼びます。

これは衝撃を分散するための自然な動きであり、ある程度のプロネーションが起こることは問題がありません。

足部のプロネーション

しかし、過度な足部のプロネーションがあることで膝や股関節など、ランニング動作全体への影響があると言われています。

このため足部のプロネーションによって膝痛などの原因になるなど、足部以外の痛みの原因になると言われることがあります。

 

足部のプロネーションと怪我のリスク

ランニングの怪我の発生率

意外にもプロネーションはランニングの怪我のリスクと関係していないという研究結果が多く報告されています1・2

足底筋膜炎やアキレス腱炎などでも足部のプロネーションはリスク要因であるという研究結果は少ないのが現状です。

さらに、プロネーションと膝痛の関連性は低いという研究結果も報告されています

ランニングプロネーション

足部のプロネーションが怪我との関連性が弱いという研究結果が多いとはいえ、現場ではプロネーションを修正することで痛みが軽減される事例は珍しくありません。

なぜこのようなズレが生じるかというと、現場では足部のプロネーションだけを治すわけではなく、身体全体のバランスを整えているからではないかと思います。

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シンスプリント

足部のプロネーションは基本的に怪我の発生率をそこまで高めるわけではありませんが、プロネーションはシンスプリントのリスクを高めることが報告されています

これは後脛骨筋などがプロネーションを抱えていることによって酷使されやすくなるのが関係しているのではないかと思います。

シンスプリント

このように足部のプロネーションによって引き起こされる怪我というものも少なからずあるわけで、足部のプロネーションを改善することはランニングの怪我予防に役立つことがあります。

 

足部のプロネーションの改善方法

ランニングシューズ

ランニングシューズはプロネーションの程度に大きな影響を与えるため、プロネーション対策が施されたシューズも売られています。

近年のシューズメーカーの技術の進歩は著しく、性能が向上してきているように思うのでプロネーション対策が施されたシューズを試してみる価値はあるかと思います。

実際にこうったプロネーション対策のシューズはランニング時の足部の負荷を軽減させる効果があることが報告されています

アンチプロネーションシューズ

しかし、足部のプロネーションだけを修正することには注意が必要です。

というのも足部が整っても身体全体のバランスが整っていないと他の怪我を誘発する可能性があるからです。

アンチプロネーションのシューズで実際に走ってみて違和感があるのであれば、履くのをやめた方が賢明だと思います。

プロネーションを減らせるかどうかよりも、快適に走れるかどうかという点が怪我を防ぐのに重要だったりします。

 

マッサージ

足部のプロネーションを修正するために、マッサージやフォームローラーでの筋膜リリースが取り入れられることがあります。

こういった方法で筋肉をほぐすと足部のプロネーションが修正されることは珍しくありませんが、一時的な効果しかないことも多いというのが問題点でもあります。

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トレーニング

足部のプロネーションを改善するために大切なのが、トレーニングで弱い筋肉を鍛えることです。

足の指を鍛えるような内在筋のトレーニングは足部のプロネーションを改善する効果があることが報告されています

これはいわゆるタオルギャザーと呼ばれるようなトレーニングや、足の指を多方向に動かす運動などが役立つと言えます。

(Sánchez-Rodríguez et al 2020)

他にも足首のトレーニングやお尻の筋肉のトレーニング、体幹トレーニングなども足部のプロネーションの改善に役立つことが報告されています

(Sánchez-Rodríguez et al 2020)

このように足部のプロネーションを改善するためには足部だけでなく、全身のバランスを整えるように鍛えていくことが大切になります。

 

まとめ

足部のオーバープロネーションはシンスプリントなどのリスクが高まりますが、総合的な怪我の発生率にはそこまで影響しないことが報告されています。

足部のプロネーションを改善するにはシューズの調整や弱い筋肉を鍛えることが役立ちます。

 

<参考文献>

  1. Burns J, Keenan AM, Redmond A. Foot type and overuse injury in triathletes. J Am Podiatr Med Assoc. 2005 May-Jun;95(3):235-41. doi: 10.7547/0950235. PMID: 15901809.
  2. Nielsen RO, Buist I, Parner ET, Nohr EA, Sørensen H, Lind M, Rasmussen S. Foot pronation is not associated with increased injury risk in novice runners wearing a neutral shoe: a 1-year prospective cohort study. Br J Sports Med. 2014 Mar;48(6):440-7. doi: 10.1136/bjsports-2013-092202. Epub 2013 Jun 13. PMID: 23766439.
  3. Neal BS, Griffiths IB, Dowling GJ, Murley GS, Munteanu SE, Franettovich Smith MM, Collins NJ, Barton CJ. Foot posture as a risk factor for lower limb overuse injury: a systematic review and meta-analysis. J Foot Ankle Res. 2014 Dec 19;7(1):55. doi: 10.1186/s13047-014-0055-4. PMID: 25558288; PMCID: PMC4282737.
  4. Jafarnezhadgero A, Alavi-Mehr SM, Granacher U. Effects of anti-pronation shoes on lower limb kinematics and kinetics in female runners with pronated feet: The role of physical fatigue. PLoS One. 2019 May 14;14(5):e0216818. doi: 10.1371/journal.pone.0216818. PMID: 31086402; PMCID: PMC6516670.
  5. Pabón-Carrasco M, Castro-Méndez A, Vilar-Palomo S, Jiménez-Cebrián AM, García-Paya I, Palomo-Toucedo IC. Randomized Clinical Trial: The Effect of Exercise of the Intrinsic Muscle on Foot Pronation. Int J Environ Res Public Health. 2020 Jul 7;17(13):4882. doi: 10.3390/ijerph17134882. PMID: 32645830; PMCID: PMC7369729.
  6. Sánchez-Rodríguez R, Valle-Estévez S, Fraile-García PA, Martínez-Nova A, Gómez-Martín B, Escamilla-Martínez E. Modification of Pronated Foot Posture after a Program of Therapeutic Exercises. Int J Environ Res Public Health. 2020 Nov 13;17(22):8406. doi: 10.3390/ijerph17228406. PMID: 33202893; PMCID: PMC7697388.

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