ランニングシューズ

裸足ランニングは怪我のリスクを減らせるのか?

2023年12月27日

ランニング愛好家の中には裸足ランニングやミニマリストシューズを使っている方もいらっしゃるかと思います。

シューズに頼るのではなく、人間本来の機能を取り戻すために裸足ランニングという手法が注目されることがあります。

 

裸足ランニングのランニングフォーム

裸足ランニングやミニマリストシューズで走ると以下のようにランニングフォームが変化することが報告されています1〜3

  • 地面にかかる力が和らぐ傾向がある。
  • 膝への負荷が減り、足首での衝撃吸収が増える可能性がある。
  • フォアフット着地に近い形になる傾向がある。
  • 足底筋膜や足の指への負荷が増える可能性がある。
  • 足のプロネーションが減る傾向がある。
  • ストライドが短くなる傾向がある。

これはシューズでの衝撃吸収ができないため、このようなランニングフォームの変化が生じると考えられています。

 

身体へのダメージ

膝痛

裸足ランニングでは膝の負担が減ると言われています。

膝のダメージを減らしたい場合に裸足ランニングを取り入れるというのも選択肢もあるかもしれません。

膝痛

 

足部へのダメージ

裸足ランニングでは足部の負荷が増すと言われています。

例えば足底筋膜炎などのリスクが高まる可能性が考えられ、ある研究で裸足ランニングでは足底筋膜がより引き伸ばされる可能性があることが報告されています

 

他にも裸足ランニングではシューズによる衝撃吸収がないため、骨へのダメージが大きくなり疲労骨折などのリスクが考えられます。

ある研究では5本指シューズによるランニングの影響を調べたところ、通常よりも足の骨の腫れが大きくなっていたことが報告されています6・8

 

怪我の発生率について

裸足ランニングを取り入れると怪我が減ると言われることがあり、そのように宣伝しているものを目にすることもあります。

しかし、裸足ランニングを導入しても怪我の発生率にはそこまで大きな違いはないかもしれません。

裸足ランニング

裸足ランニングに近いミニマリストシューズを使って怪我が増加したという報告があります。一方でミニマリストシューズの経験豊富な人は怪我が少ない傾向にあったという報告があります10

このように裸足ランニングでポジティブな効果があった人もいればネガティブな効果があったどちらの事例もあり、こういった研究をまとめると総合的な怪我の怪我の発生率には大きな差がないことが報告されています11

 

長期的に身体が適応していく

裸足ランニングを続けていると徐々に身体が適応していき、慣れることで裸足ランニングでも力強く走れるようになっていきます。

ある研究では裸足ランニングを導入した当初はあまり大きな力で走ることができていなかったものの、継続的に裸足ランニングをすることで徐々に力強くなっていくことが報告されています

裸足

裸足ランニングやミニマリストシューズを履いていると足の指の筋肉が鍛えられることが報告されています5・6

しかし、足周りに一定の負荷がかかりやすい状態であるということの裏返しでもあると思います。

 

そして、足の指の筋肉が弱い人が裸足ランニングで怪我をしやすい傾向にあることが報告されています

このため裸足ランニングでいきなり長い距離を走るのではなく、少しずつ限度を超えない範囲で徐々に適応していくことが大切かと思います。

いずれにしても裸足ランニングやシューズでのランニングにかかわらず、限界を超えないように運動量を調整する必要があることには変わりません。

 

裸足ランニングの体験談

私自身も裸足ランニングにハマっていた時期があります。

怪我に悩まされていた時に裸足ランニングを取り入れて、足の痛みが減っていった経験があります。

裸足感覚に近いビブラムランニングシューズでハーフマラソンの大会に出場したこともあります。

普段から裸足ランニングをしてい他ので、ハーフマラソンを走っても何の問題もありませんでした。

 

それから年月が経過し、いつしか裸足ランニングへの熱も冷め、普通のシューズで運動をするようになっていきました。

そして、久しぶりに裸足ランニングを取り入れてみたところ、1km走っただけなのに怪我をしてしまいました。

以前はハーフマラソンを完走できていたのに、こんな短い距離で怪我をしてしまうことが信じられませんでした。

おそらく普段ないような刺激が急激にかかってしまったためだと思います。

 

このことから裸足ランニングは足部に高い負荷がかかるという点を改めて認識し、裸足ランニングに普段から適応しているかどうかが重要であると思いました。

そして、裸足ランニングの高い負荷に慣れた状態ならば、かなり強靭な足部に鍛え上げられたと言えるのかもしれません。

しかし、わざわざ裸足ランニングで足部を鍛えなくても、通常のシューズで走行距離を増やしていけば同様の効果があるのではないかと今では思います。

結局のところ、少しずつ負荷をあげてそれに適応させるということには変わりはないのですから。

 

まとめ

裸足ランニングに関して総合的な怪我の発生率に大きな変化はないかもしれませんが、負荷がかかりやすい場所が変化します。

負荷が過剰になれば怪我をしやすく、負荷に適応することができれば強靭な肉体を手に入れやすくなり、どのように適応させていくかが大事なポイントであると思います。

 

<参考文献>

  1. Perkins KP, Hanney WJ, Rothschild CE. The Risks and Benefits of Running Barefoot or in Minimalist Shoes: A Systematic Review. Sports Health. 2014;6(6):475-480.
  2. Hall JPL, Barton C, Jones PR, Morrissey D. The biomechanical differences between barefoot and shod distance running: a systematic review and preliminary meta-analysis. Sports Med. 2013;43(12):1335-1353.
  3. Chen TL-W, Wong DW-C, Wang Y, Lin J, Zhang M. Foot arch deformation and plantar fascia loading during running with rearfoot strike and forefoot strike: A dynamic finite element analysis. J Biomech. 2019;83:260-272.
  4. Hollander K, Liebl D, Meining S, Mattes K, Willwacher S, Zech A. Adaptation of Running Biomechanics to Repeated Barefoot Running: A Randomized Controlled Study. Am J Sports Med. 2019;47(8):1975-1983.
  5. Miller EE, Whitcome KK, Lieberman DE, Norton HL, Dyer RE. The effect of minimal shoes on arch structure and intrinsic foot muscle strength. Journal of Sport and Health Science. 2014;3(2):74-85.
  6. Johnson AW, Myrer JW, Mitchell UH, Hunter I, Ridge ST. The Effects of a Transition to Minimalist Shoe Running on Intrinsic Foot Muscle Size. Int J Sports Med. 2016;37(2):154-158. doi:10.1055/s-0035-1559685
  7. McDonald KA, Stearne SM, Alderson JA, North I, Pires NJ, Rubenson J. The Role of Arch Compression and Metatarsophalangeal Joint Dynamics in Modulating Plantar Fascia Strain in Running. PLoS ONE. 2016;11(4):1.
  8. Ridge ST, Johnson AW, Mitchell UH, et al. Foot bone marrow edema after a 10-wk transition to minimalist running shoes. Med Sci Sports Exerc. 2013;45(7):1363-1368. doi:10.1249/MSS.0b013e3182874769
  9. Ryan M, Elashi M, Newsham-West R, Taunton J. Examining injury risk and pain perception in runners using minimalist footwear. Br J Sports Med. 2014;48(16):1257-1262.
  10. Goss DL, Gross MT. Relationships among self-reported shoe type, footstrike pattern, and injury incidence. US Army Med Dep J. December 2012:25-30.
  11. Hollander K, Heidt C, VAN DER Zwaard BC, Braumann KM, Zech A. Long-Term Effects of Habitual Barefoot Running and Walking: A Systematic Review. Med Sci Sports Exerc. 2017 Apr;49(4):752-762. doi: 10.1249/MSS.0000000000001141. PMID: 27801744.

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