ランニングシューズ

シューズの寿命・シューズのすり減り方と怪我の関係

2024年2月2日

使い古されたランニングシューズは怪我につながりやすいという話を一度は耳にしたことがあるかと思います。

ここでランニングシューズの性能の変化や、シューズのすり減り方などに関する研究をご紹介していきたいと思います。

 

使い古されたランニングシューズ

ランニングシューズの寿命

ランニングシューズは繰り返しのランニングで徐々にその機能が失われていきます。

使い古されたシューズがランナー膝などと関係しているという意見があり、約800km走るとクッションシューズの衝撃吸収能力は当初の70%程度になることが報告されています

このため膝の負担を減らすなどの目的でクッションシューズを使っている場合には、走行距離が増えてくるにつれて膝の違和感が出やすくなることがあります。

 

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また、使い古されたインソールでは身体のバランスが微妙に変化し、膝の負荷が変わってくることが報告されています

シューズの微妙な接地面の変化によって関節の動きが影響され、負担がかかりやすいランニングフォームへとなってしまう可能性があるわけです。

ランニング

そして、シューズの靴底がすり減った状態ではグリップ力が低下し、滑りやすく転倒のリスクがあります

トレイルランや雨が降った路面など、滑りやすい状況下ですり減ったランニングシューズを履くことは避けたほうが良いでしょう。

 

ランニングシューズの買い替えのタイミング

シューズメーカーの中には500kmほどでシューズの性能が落ちるので早めに買い替えましょう、と推奨していることがありますが、

この基準で買い換えるとランニングシューズへの出費が増えてしまい、メーカーがシューズを売りたいがためのポジショントークではないかと疑ってしまいます。

あくまで比較的良い状態でランニングシューズを使いたい時の目安ではないかと思います。

 

ランニングシューズの買い替えに明確な基準があるわけではなく、個人の考え方次第で買い換えるので良いかと思います。

一定の距離や期間、目に見えるようなシューズの消耗、ソールの変形などがあればシューズの寿命が近づいているサインです。

そして、何より実際に走っている時の感覚というのは重要で、走っている時に違和感を感じるのであれば買い替えた方が無難でしょう。

 

ランニングシューズのすり減り方のパターン

シューズのすり減り方とランニングフォームの関係

まずシューズのすり減り方というのはどのようにして起こるのか?、そして、あくまで限定的な情報に過ぎないということを理解することが大切です。

意外にもシューズがすり減るのは体重がのしかかっていた場所と関係していないという研究結果が報告されています

どちらかというと地面に着地した瞬間に最も摩擦が発生していた場所、いわゆる地面への接地時にグリップが効いていた場所と実際にシューズがすり減っていた場所は近いことが報告されています5・6

(Bharthi et al 2022)

また、別の研究でも歩行動作の関節の角度とシューズのすり減り方には関連性がないことが報告されています

そして、シューズの性能やデザインによってもシューズのすり減り方は影響されるという研究結果もあります

こういったことからシューズのすり減り方が身体の状態を表すサインとしては、限定的な情報に過ぎないと言えるでしょう。

 

シューズの擦り減り方から推測できること

シューズのすり減り方とランニングフォームの関連性は弱いという科学根拠があるものの、世間ではシューズのすり減り方からランニングの癖を推測することが珍しくないと思います。

例えば、踵の外側からとつま先の内側にかけてシューズがすり減っていくことが一般的であると考えられており、

シューズの内側がすり減っている場合にはプロネーション(回内)が起きている可能性があり、シューズの外側がすり減っている場合にはスピネーション(回外)の癖が考えられます。

繰り返しになりますが、こういったシューズのすり減り方に関する科学的根拠は弱く、参考程度に受け止めておくことがよいかと思い明日。

 

ランニングシューズのすり減り方と怪我の関係性

そもそもランニングフォームやシューズのすり減り方のパターンとの関連性が弱く、他にもシューズのデザインや性能によっても影響を受けるため、

すり減ったランニングシューズの場所からランニングの怪我を推測することは難しいと言えるでしょう。

 

そもそも足底にかかる圧力のパターンと怪我の関連性についても多くの研究が行われ、ランニングの怪我との関連性は弱いことが示されています

(Buldt et al 2018)

 

さらには姿勢とランニングの怪我との関連性は弱く、ランニングフォームも怪我との関連性も弱いことも研究で明らかにされています。

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まとめ

使い古されたシューズは性能が落ちやすく、クッション機能の低下、バランスの変化、関節への負荷の増加、グリップ力の低下などにつながります。

そしてシューズがすり減るパターンとランニングの怪我との関連性は基本的に弱いと言えるでしょう。

 

<参考文献>

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