マラソンランナーに対するウェイトトレーニングの効果
タイムの改善
ウェイトトレーニングには長距離ランナーのタイムを改善する効果があることが報告されています1。
国際大会に出場するエリートランナーはウェイトトレーニングを取りれていることが多く、レベルの低い大会に参加しているランナーほどウェイトトレーニングを取り入れていない傾向にあることが報告されています2。
そしてウェイトトレーニングでは持久力を鍛えるために低重量をたくさんの回数を反復するよりも、高重量トレーニングの方が長距離走のタイムの改善効果が大きいことが報告されています3。
怪我予防
ウェイトトレーニングには怪我予防の効果があり、筋力が強いほうが怪我をしにくいと言われています4。
こういったことからマラソンランナーがウェイトトレーニングに取り組むことで怪我につながるとは限らず、適切なトレーニングを行えばむしろ怪我予防の効果も期待できる可能性があります。
とはいえ誤ったウェイトトレーニングによって怪我をしてしまうマラソンランナーも多いことも現状ではないでしょうか。
専門家の指導のもとトレーニングを行うことで怪我を減らすことができるが、専門家をつけずに自己流でトレーニングをしているランナーは怪我が減らないという研究結果が報告されています4。
トレーニングの知識と経験がないと逆効果になってしまう可能性さえあると思います。
例えば、YouTubeなどには良いトレーニング動画がありますが、怪我を悪化させてしまうリスクのある質の悪いトレーニング動画のほうが多い印象です。
ウェイトトレーニングの怪我のリスク
トレーニング量
ウェイトトレーニング自体が身体にダメージを与えるもので、過剰なトレーニングは怪我につながってしまいます。
例えば普段の走行距離が多いランナーのほうが怪我をしにくいという事実があったとしても、身体が出来上がっていないのに無理矢理走ってしまえば怪我をしてしまいます。
少しずつトレーニングの負荷を増やして怪我の耐性をつけていくことが大事です。
頭でわかっていても適正なトレーニング量を見誤って怪我をしてしまう人が多く、難しい部分でもあります。
キャパシティーを超えない範囲内の適度な負荷で取り入れるのならば良薬となり、その人のキャパシティーを超えてしまったのならば怪我につながります。
トレーニングの種類
特定のトレーニング種目に偏ってしまうと怪我をしてしまうリスクがあり、インナーマッスルなどを含めて全身の筋肉のバランスを整えていくことが大切です。
マラソンランナーに例えるならば、ポイント練習やスピード練習だけやってもすぐに限界が来てしまうという感覚に近いでしょうか。
ジョグで一定距離を走り込んで土台を作り込まないとポイント練習で十分な効果が見込めないように、インナーマッスルという土台が出来上がっていないと高重量ウェイトトレーニングの効果を十分に引き出すことができませんし、怪我への耐性が弱いためすぐに怪我をしてしまいます。
他にもプロ選手や強豪校で行われているトレーニングを下手に取り入れて怪我をしてしまう事例も多々あります。
個人のレベルや状態に合わせてトレーニングをメニューを調整することが大切なのですが、有名選手と同じものばかりだと身の丈に合わないトレーニングになってしまうリスクがあります。
安全にウェイトトレーニングを取り入れるポイント
直近で怪我をしていないこと
ランニングで直近で怪我をしていないこと、半年くらい怪我をしていないようなランナーの方が安全にウェイトトレーニングを取り入れることができます。
故障しがちなランナーの場合にはウェイトトレーニングを取り入れる前に怪我を治す、怪我の再発防止をすることの優先度が高いと言えます。
たくさん走っても怪我をしにくい強靭な肉体を手に入れてからウェイトトレーニングを取り入れた方が賢明です。
インナーマッスルも鍛える
高重量トレーニングがマラソンのタイム改善効果が大きいからと言って、大きな筋肉ばかりを鍛えていると怪我のリスクが高まります。
インナーマッスルや体幹も忘れずに鍛えることがウェイトトレーニングの怪我予防において重要です。
少しずつトレーニング量を増やす
ウェイトトレーニングでの怪我を防ぐためには徐々にトレーニングの負荷を増やし、身体を慣らしていくことが大切です。
自分はもっとできるはずだ!と過信するのではなく、自分の能力を冷静に見極めることがポイントになります。
そして決められたスケジュールに従ってトレーニングをするのではなく、状態が悪いと感じたら休養を入れることも大事です。
蓄積されたダメージは数ヶ月後に怪我となって表れることが多々あり、気がついた時には既に手遅れということが珍しくありません。
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まとめ
マラソンランナーはウェイトトレーニングを取り入れることでタイムの改善や怪我予防などの効果があります。
しかし、誤ったウェイトトレーニングはむしろ怪我のリスクがあり、自分の状態を見極めながらトレーニングを取り入れることが大事なポイントです。
- Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. The Effect of Strength Training Methods on Middle-Distance and Long-Distance Runners' Athletic Performance: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2024 Apr 17. doi: 10.1007/s40279-024-02018-z. Epub ahead of print. PMID: 38627351.
- Blagrove RC, Brown N, Howatson G, Hayes PR. Strength and Conditioning Habits of Competitive Distance Runners. J Strength Cond Res. 2020 May;34(5):1392-1399. doi: 10.1519/JSC.0000000000002261. PMID: 29023328.
- Alexander JLN, Barton CJ, Willy RW. Infographic. Running myth: strength training should be high repetition low load to improve running performance. Br J Sports Med. 2020 Jul;54(13):813-814. doi: 10.1136/bjsports-2019-101168. Epub 2019 Sep 25. PMID: 31554613.
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