睡眠とマラソンのパフォーマンス
睡眠はランナーのコンディションに影響を与える可能性があり、適切な睡眠を確保することが大切です。
睡眠の質はマラソンのタイムはにも関係していて、睡眠の質が良いとハーフマラソンのタイムが速い傾向にあるという研究結果が報告されています1。
一方で睡眠不足になるとランニングのパフォーマンスが低下する可能性があります。
8時間睡眠と4時間睡眠を比較した研究では睡眠不足によって12分走のペースが6%減少したことが報告されています2。
睡眠不足によって代謝の低下などの悪影響がありますが、より長い時間のランニングほど睡眠不足の影響を受けやすいことが報告されています3。
また、慢性的な睡眠不足を抱えている選手はレース中に胃腸の不快感が出やすいことも報告されています4。
このように睡眠はランニングのパフォーマンスに影響する可能性があり、睡眠の質を高めることでマラソンのタイムの改善に役立つ可能性があります。
睡眠と怪我のリスク
睡眠は怪我や痛みにも関係しており、こういった点からも十分な睡眠を取ることが重要であると言えます。
実際に睡眠不足はランニングの怪我のリスクが少しばかり高くなること、睡眠不足の状態だと痛みを感じやすくなることが報告されています5・6。
適切な睡眠について
一般的には7〜9時間の睡眠時間が推奨されており、アスリートの場合にはそれよりも長い睡眠時間を取ることでパフォーマンスが向上する可能性があることが報告されています7。
マラソンの世界王者だったキプチョゲ選手は睡眠時間が10時間であり、夜に8時間の睡眠と昼寝が2時間ほどであると言われています8。
昼寝には疲労回復の効果があり、特に睡眠時間が不足しているランナーほど昼寝の恩恵が大きくなります9。
とはいえ仕事や家庭などでそもそも十分に走る時間のないランナーも珍しくなく、頭でわかっていても長い睡眠時間を確保することが難しい人もいるかと思います。
睡眠時間を確保することが難しい場合には、せめて睡眠の質を高めることが役立つかと思います。
就寝直前の運動は睡眠の質に影響する可能性があり、1時間前のランニングは睡眠の質を悪化させることが報告されています10。
また、パフォーマンスアップのためにカフェインを摂取しているランナーもいるかと思いますが、カフェインを摂取するタイミングにも注意が必要です。
ランナーを対象にした実験では夕方にカフェインを取ると睡眠の質が悪くなることが報告されています11。
まとめ
睡眠はマラソンのパフォーマンスに影響し、睡眠不足になるとタイムが低下しやすく、長い距離のランニングほど睡眠不足の影響が大きくなります。
1日に7〜9時間の睡眠や昼寝、そしてカフェインの過剰摂取や寝る直前のランニングを控えて睡眠の質を高めることもコンディションを整えるのに役立ちます。
<参考文献>
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