練習メニュー

ランナーに最適な月間走行距離とは?

2024年11月12日

 

月間走行距離とパフォーマンス

走った量は裏切らない?

「走った量は裏切らない」という有名な言葉があるように長距離においては月間走行距離が多い方がタイムが速くなる傾向があります。

現代のマラソンのトレーニングの礎になっているリディアード式のトレーニングでは週に160km、月間走行距離で言えば600kmというのがひとつの目安となっています。

しかし、これが絶対的な正解ではなく、それよりも多い走行距離で結果を出している人、あるいは少ない走行距離で結果を出している人がいます。

ランニング

マラソン世界記録、2時間0分35秒で走ったKelvin Kiptum選手は週間走行距離が300kmに達しているという情報があります

月間走行距離にすると1000kmを超えるようなクレイジーなトレーニング量をこなして驚異的な成果を出していると思います。

しかし、月間走行距離1000kmで速くなれるとは限らないし、むしろ逆効果になってしまうこともあります。

 

 

運動生理学の観点

スポーツ科学の研究においてランニングの量が大事なのか、それともランニングの質が大事なのか?という議論があります。

ランニングに関して多くの研究が行われているのですが、残念ながら明確な結論は出ていません。

ミトコンドリア

現時点でわかっていることは最適な月間走行距離に個人差があるということで、ゆえに科学的に明確な結論を出すことが難しいということです。

世界トップクラスのランナーの練習メニューを真似しても思うような結果が出ない、ということがよく起こります。

 

月間走行距離とリカバリー

最適な月間走行距離には個人差がありますが、これはもしかすると生まれ持った筋肉の性質も関係しているかもしれません。

一般的に長距離走の選手は持久力に優れいていて、爆発的な力を発揮する速筋繊維に比べて持久力に優れた遅筋繊維の割合が多いと言われています。

そして、マラソンランナーの中でもスピードタイプと持久力タイプに分かれるように、人によって速筋繊維と遅筋繊維の割合が違います。

速筋遅筋

興味深いのは、この速筋繊維と遅筋繊維の割合によって練習のリカバリー速度に違いが生じる可能性があるという点で、実際に遅筋と速筋の割合でエクササイズのリカバリー時間が変わってくるという研究結果が報告されています

つまり、速筋が多いのか遅筋が多いのかで最適なトレーニング方法や月間走行距離が違ってくる可能性があるということです。

 

この仮説を裏付けるような興味深い話があります。

最近話題の二重閾値走、パリオリンピックで金メダルを獲得したヤコブ・インゲブリクトセン選手の練習メニューといった方が有名かもしれません。

このトレーニング方法の考案者であるマリウス・バッケン氏は速筋繊維が多いランナーに二重閾値走は適していないのではないか?ということを述べています

マラソン

速筋や遅筋の割合で最適な月間走行距離やトレーニング内容が違ってくるという仮説を検証している研究や論文は数少なく、科学的根拠は弱いと言えます。

しかし、何かしらの先天的または後天的な要素が最適な練習メニューに個人差を生み出しているのではないか?と考えると腑に落ちるものがあると思います。

 

筋肉の性質によってある程度の練習量が決まってくるとしても、トレーニングで肉体を鍛えていくことで最適な走行距離を徐々に伸ばすことは可能ではないかと思います。

あくまで肉体の限界を超えるような無理をするとオーバートレーニングに陥る可能性があり、最適な月間走行距離は人によって違うということです。

 

月間走行距離と怪我のリスク

月間走行距離を増やすときのリスクの一つが怪我をしてしまう可能性です。

走行距離を増やすことで怪我をしやすくなる可能性はありますが、ひとたび膨大な走行距離に身体が適応してしまえば怪我のリスクはそこまで大きいとは言えません。

怪我で思うように走ることができない人も多くいますが、少なくとも怪我をしていないランナーにとっては怪我のリスクが月間走行距離の限界値を決めてしまうほどの決定的な要因にはなりません。

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月間走行距離によるパフォーマンス向上の限界を決めるのは怪我のリスクというよりも、オーバートレーニングのリスクではないかと思います。

その負荷に適応することができるのか?十分なリカバリー能力があるのか?という点がその人の最適な月間走行距離に影響を与えているのではないでしょうか。

 

まとめ

トレーニング歴、速筋や遅筋の割合、細胞の修復能力など身体的な性質によって最適な月間走行距離が違ってくる可能性があります。

 

<参考文献>

  1. https://olympics.com/en/news/kelvin-kiptum-incredible-300km-per-week-training-regime
  2. Lievens E, Klass M, Bex T, Derave W. Muscle fiber typology substantially influences time to recover from high-intensity exercise. J Appl Physiol (1985). 2020 Mar 1;128(3):648-659. doi: 10.1152/japplphysiol.00636.2019. Epub 2020 Jan 30. PMID: 31999527.
  3. http://www.mariusbakken.com/the-norwegian-model.html

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