ランニングは膝の軟骨に良くないとか、マラソンランナーの軟骨はすり減ってほとんど残っていないとか言われることがあります。
しかし、ランニングは必ずしも悪影響を及ぼすわけではなく、適度なランニングはむしろ膝の軟骨にとって良い影響を与える可能性があります。
ランニングと膝の軟骨
ランニングの短期的な影響
ランニングした直後は軟骨にダメージを受ける可能性があります。
75分のランニングの前後にMRIで軟骨の量を計測したところ、ランニング後には膝の軟骨の量が少し減っていたという研究結果があります1。
他の研究においてもより長い距離のランニングで膝の軟骨の量が減少していたことが報告されています2。
このようにランニングで膝の軟骨に微細な損傷が生じるという研究結果は多く報告されており、マラソンなどは膝に良くないという印象を持つかもしれません。
しかし、こういったマラソン直後の軟骨の変化は一時的なものであり、短期間ですぐに元に戻るという研究結果も多く存在しています3・4。
ランニングの長期的な影響
長期的にみれば軟骨もランニングの刺激に適応して、少しずつ軟骨の状態が改善していく可能性があります。
運動をしていない人、週に2回運動をしている人、エリートランナーの軟骨を比べた研究では、より多く運動をしている人のほうが軟骨の状態が良い傾向にあったそうです5。
他の研究でも週に3回のエクササイズを4ヶ月続けたところ、何もしなかった場合に比べて軟骨の状態が改善されたことが報告されています6。
一般的に軟骨は再生能力が低いと言われていますが、適度なランニングをすることで軟骨に良い刺激を与えることができ、軟骨の機能が徐々に改善されていくことが研究で明らかになっています7・8。
適度なランニングであれば怪我の耐性が強くなっていき、より長い距離を走っても怪我をしにくい身体を作り上げることができます。
ランニングによる膝の軟骨の痛みの原因
走り過ぎ
ランニングは膝の軟骨に良い刺激を与えるとはいえ、過剰なランニングは膝の軟骨の痛みにつながります。
競技としてランニングに取り組んでいる人達よりも、趣味としてランニングを楽しんでいる人達の方が軟骨の怪我の発症率が低かったという研究結果が報告されています9。
このため頑張りすぎず、適度なランニングが膝の状態を良くするために重要であると言えます。
ランニングフォーム
ランニングフォーム次第では軟骨へ負荷がかかりやすくなる可能性があります。
O脚など膝が内側に入りやすいランナー、いわゆるニーインの状態で走ると軟骨の負荷が大きくなるが報告されています10。
そして、膝の痛みを抱えているランナーは痛みのないランナーと比べて、ランニング時に膝が内旋しやすいことも報告されています11。
こういった場合などにはランニングフォームの改善に取り組むことで、軟骨への負荷を減らせる可能性があるかと思います。
ランニングの膝の軟骨の痛みの対策
シューズ
インソールを使うことで身体の歪みを整えることができ、ランニングによる軟骨の痛みの改善に役立ちます。
市販のインソールでは身体に合わせることが簡単ではないので、専門家にインソールを処方してもらうことが賢明です。
また、クッションシューズを使うことでランニング時の膝の軟骨の負荷を減らすことができます。
クッションシューズには賛否両論ありますが、最近のクッションシューズは性能が向上してきていて、快適に履くことができるモデルも登場しています。
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走行距離の調整
ランニングでの膝の軟骨の痛みを防ぐために極めて重要なことが運動量の調整です。
自分自身のキャパシティを見極めて走行距離が過剰にならないように調整すること、適度な休養を取り入れることが大切です。
何をやってもランニングでの膝の軟骨の痛みが良くならないという場合でも、自分自身のキャパシティを見極めることができていなかったという事例も珍しくありません。
数ヶ月とランニングを休んでも膝の軟骨の痛みが軽減されないという場合には他の原因が考えられるので、専門家に相談するのが良いでしょう。
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まとめ
適度なランニングは軟骨にいい刺激を与え、膝の軟骨の痛みを予防する効果があり、軟骨が強化されることで長距離を走っても軟骨が痛みにくくなります。
一方で過剰な距離を走りすぎたり、十分な休養を取っていなかったり、ランニングフォーム次第によっては軟骨にダメージが溜まってしまうことに注意が必要です。
<参考文献>
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