ボディメンテナンス

ランニング後のアイシングの効果について

 

ランニング後のアイシング

ランニング後の身体のケアやリカバリー方法のひとつとして考えられるのがアイシングです。

箱根駅伝で活躍している青山学院大学もアイシングを取り入れているとか。

青学の選手たちは、競技会場に最後まで残っていることで有名になりました。他のチームが帰っても、クールダウンのストレッチやアイシングを念入りにしているんですよ

日経ビジネス 「青学の箱根駅伝3連覇を支えた疲労解消法とは?」

 

とはいえランニング後に毎回アイシングをするのは面倒であり、習慣化することは難しいかと思います。

そもそもランニング後のアイシングが何の役に立つのか?ということがわかっていてないと、無駄な手間を増やすだけになってしまう可能性があります。

 

アイシングの効果

怪我や痛み

怪我や痛みなどによる炎症はアイシングをすることが効果的であると言われています

これはランニングなどによる炎症の二次損傷を防ぐためであり、炎症によって良い細胞なども破壊されてしまうことがあるためです。

アイシングによって炎症を止めることで、怪我や痛みの悪化を防ぐことができると考えられています。

足アイシング

怪我や痛みがある場合にはアイシングが効果的ではありますが、炎症がない場合にアイシングをすると逆効果になってしまう恐れがあります。

ランニング後にアイシングをすると筋肉の損傷の回復が遅かったという研究結果が報告されています

これはアイシングによって血流を阻害してしまうためであり、細胞を修復するための活動が抑制されてしまいます。

適度な炎症は身体にとって必要な反応であると言われており、怪我や痛みなどを抱えていなければ無理にアイシングをする必要はないと言えます。

 

トレーニング効果の阻害

アイシングはトレーニングによる筋力強化や持久力向上を阻害するという研究結果が報告されています

トレーニング後にアイシングをすることで血流が制限されてしまうことが、トレーニングによる細胞の修復・強化の妨げになってしまうと考えられています

膝アイシング

怪我や痛みを抱えていないのにランニング後にアイシングをしてしまうと、トレーニング効果を弱めてしまう結果になる可能性があります。

このため過度なアイシングは避けるべきであり、健康なランナーがランニング後に毎回アイシングをする必要はないかと思います。

 

水風呂の効果

アイシングとは少し違いますが、ランニング後に水風呂に入るというのもリカバリー方法のひとつとして知られています。

特に猛暑の時期はランニング後の水風呂によってリカバリーが促進されることが報告されています

ただし、水風呂の温度は冷たいほど効果があるというわけではなく、水温が10℃でも20℃でもリカバリーに差はなかったそうです。

このため冷たすぎる水風呂に我慢して入る必要はありません。

水風呂

猛暑では水風呂に即効性がありますが、通常の気温においてはランニング後の水風呂に即効性のあるリカバリー効果はあまり期待できません

2〜3日後のランニングのパフォーマンスを回復させるのに水風呂の効果があることが報告されていて、水風呂によって身体が少しずつゆっくり回復していくという

 

通常の気温では水風呂の物理的な即効性が弱まりますが、ランニング後に水風呂に入ることで気持ちがリフレッシュするという部分は大きいです。

実際に水風呂はメンタル面でのリカバリー効果が大きいことが報告されており、やる気を回復させるのに良い方法であるかと思います。

ランニングは継続してトレーニングをすることが大事な競技であるため、バーンアウトや燃え尽き症候群を回避するのは重要なことです。

 

まとめ

怪我や痛みを抱えている場合にはアイシングが効果を発揮しますが、過度なアイシングは血流を阻害し、トレーニング効果を弱めてしまう可能性があります。

適度な炎症は身体を修復するために必要なものであり、アイシングの取り入れ方を誤ると逆効果になる可能性があるので注意が必要です。

 

<参考文献>

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